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0:夢 夜空に輝く天の川。 周りの喧騒がひたすら耳障りだった。 瞼は開いているが、飛び込んでくる情報は限りなく絞られ、指向性を持たされている。 ぼんやりと認識されるのは、人の声と、顔と、感触と……。 水滴。 とうとう雨が降り始めた。 雨脚は強まっていく。 ああ、星が綺麗だ。 俺は願った。 次に目が覚めるその時は、今より強い自分であれますように。 …………。 やがて俺は溺死した。 1:予言 世界の始まった日。 諸説ある。 うん十億年前。 四年前。 昨日。 今。 記憶という脆弱な結晶体を、証明する術はまだない。 出口の見えないラビリンス。 迷子になった思考が、己の存在の危うさを露呈させる。 だからこそSOS。 信号を発信し、居場所探し。 助けてください。 このSOSがあなたに届きましたら。 どうか早急なる救出を。 当サイトはもれなく未来永劫リンクフリーです。 § 「…………」 デリート。 …………。 ………………。 「U、N、K、O」 カタカタカタ。 うんこ。 ついでにネットで拾ってきた画像も貼り付けてやる。 「ふう……」 業務終了。 「いたっ」 背後からしたたかに殴られる。 振り向く。 顎を少々持ち上げ、視野とフォーカスを調整。 無自覚な行動の先に待ち受けていたのは、艶やかな十二単に身を包んだ麗しき姫君。 だったらいいな。 ないけどな。 「アホキョン」 目が合った瞬間、罵倒が飛んできた。 「キョン、あんたはどうしてそんなにアホなの? あんたが愚かな行動を起こすたびに引き合いに出される有蹄動物が不憫に思えてきたから、 これからはささやかなリスペクトの意味も兼ねてアホと呼ぶことに決めたわ」 ふふん、と得意げに胸を反らして見せた。 動作と同調して、後頭部から垂れて腰にまで達する馬の尻尾が、ゆらゆらと振幅する。 「ほらな」 「なによ」 「いや、なんだ、うん?」 鮮やかな原色のメガホンに目が行った。 「ああ、これ?」 手元で固定された視線に気づいたらしい。 「落ちてた。野球部に」 「へえ」 そうか、盗んだのか。 「…………」 「…………」 沈黙が流れる。 「さっさと書き直しなさいよ」 せっつかれる。 「え、ダメなのか?」 「愚問」 叩かれた。 「あんた、あたしが前に言ったこと覚えてる?」 「はて」 確か、普通と一味違うただならぬ気配がぷんぷんと漂うサイトにしなすわ~い、だったかな。 「はいっ、やり直す!」 消される。 なんてことを……。 「せっかく一気にただならぬ気配がぷんぷんと漂うサイトになったというのに」 「うんこの臭いしかしないわよ! これじゃあ寄るものも寄ってこないじゃない!」 「それは早計だな。もしかしたら、この“うんこ”という三文字が、とてつもない能力を秘めた人材を惹きつけるキーワードなのかもしれないじゃないか」 「うんこに引き寄せられるアブノーマルな性癖を秘めた人材なんて願い下げよ!」 放課後の文芸部部室にてうんこを連呼する二人。 それを遠巻きから見物している超能力者と未来人、マイウェイを突き進み上製本の薄紙を繰り続ける宇宙人。 日常があった。 § やがて定時となり、解散となった。 「いかん」 明日提出のプリントを机に入れっぱなしだったと気付いたのは、坂の中腹まで来てからだ。 「いかん……」 ものすごく億劫だ。 だがこのまま愚図っていても始まらない。俺は踵を返し、今しがた下ってきた道を登る。 もうずいぶん遅いため、校内に人の姿はまばらだ。 とっとと帰ろう。 教室に足を踏み入れる。 「あら」 人がいた。 それはどこか懐かしいような。 いや、そんなはずはない。 毎日顔をあわせているじゃないか。 「こんばんは」 少女――朝倉涼子は微笑を浮かべた。 「…………」 「忘れ物?」 「…………」 「違った?」 首を傾げる。 「ああ」 なんだろう。 一瞬、動けなかった。 「プリントを取りに」 席を指差す。 「そう」 含みのある笑い方だ。 「帰り道で気付いて」 夕日、教室、朝倉、二人きり。 単語が中空に羅列する。 「明日まで提出だから」 長門、手紙、谷口、再構成。 強烈なフラッシュバック。船酔いにも似た吐き気と頭痛に、立っていられない。 「だから」 右手を、無意識に見た。 「…………」 ……何もない。 当たり前だ。 「大丈夫よ」 朝倉が歩み寄ってくる。言葉の意味は不明。 しゃがみこんだ俺の足は、床に根を張ったように動かない。 「大丈夫、大丈夫」 なにが? その問いに答えるように、すれ違う瞬間、耳元で彼女が囁いた。 「今日は殺さない」 「あ……」 暗転。 § 意識を取り戻すと、私室のベッドの上に横たわっていた。 時刻はすでに深夜。 あの放課後での出来事から、記憶は途絶えている。 朝倉涼子。 思い出した。 思い出したということは、忘れていたということだ。 あんな凶悪すぎるイレギュラーを。 身震いがした。 § 翌日の昼休み、朝倉を屋上に呼び出した。 「告白?」 「馬鹿なことを」 「誤解だってされるわよ、こんな人気のない場所に連れ込んだら」 「しないさ、おまえは」 「涼宮さんよ?」 「…………」 いやな汗が背中を伝った。 「見てるの?」 「ええ、バッチリと」 「…………そうですか」 振り向くことは不可能だった。 「さあ、説明しろ」 俺は恐怖を押し殺し、無理矢理話を進めた。 「どれを?」 「すべてだ」 「うーん、どうしよっかな」 「ふ」 朝倉の体を壁に押し付ける。 背中に注がれる視線の熱量が増した気がしたが、この際気にしないことにする。 「言うこと聞くまで、逃がさないぜ。大人しくしな」 「あなたヤケクソになってない?」 「な っ て ま せ ん」 朝倉は、ひとつ小さく息を吐いた。 「私は昨日、七月八日、あの場所で生まれた」 とつとつと語り始める。 「それは私にとっても計算外の出来事だった。正直驚いたわ」 くるっとターンして、俺に背を向ける格好になる。 「生まれた。人間のように、限りなく受動的に。どうしてだと思う?」 「まさか、ハルヒが望んだからとでもいうのか」 一番可能性がありそうな解だった。 ていうか、それしか考えられない。 理由は知らないが、はた迷惑なことを。 「いいえ」 かぶりを振る。 「あなたが望んだから」 「え?」 豆鉄砲を食らった鳩状態となる。 「俺が?」 「ええ」 現在、俺のステータスは【混乱】だ。 「……そんな、嘘を」 「望んだのよ、それはとても強く」 再度ターン。 「迷子のあなたにヒントをあげる」 俺たちは、一メートルの空気を隔てて対峙する。 「まずあたしの存在、これが一つ目の間違い」 間違い。 嵌まらないジグソーパズルのピース。 それはすなわち異常。 「これはあなたの始めた間違い探し」 コンクリートの地面に、黒いシミが広がり始める。 「その途中で、あなたは失い続ける。 小さかった波紋は次第に広がりを持って、いずれ大切な仲間さえも。 そうやって辿り着いた真実にも、きっと破滅しかない」 彼女は息を継ぎ、俺と視線を接ぐ。 「だからせめて……」 ゲームの開始を告げる合図のように、唐突に。 「大切に、正誤なさい」 雨が降り出した。 2:違和感 教室に戻って席に座るや否や、背中をシャープペンの先端で刺される。 プスプスプスッ。 痛い。 顧みて訴える。 「痛いよ」 「痛くないっ」 えー。 「あのなあ」 抗議すべく、ハルヒをガン見する。 「あれ?」 違和感。 「なに」 「なあ」 「なによ」 「……いや」 ポニーテール。 おまえって、前からそんな髪型だったっけ? 疑問を飲み込み、俺は前に向き直る。 ――正誤なさい。 「…………」 プスプスプスッ。 「……痛い」 昼休みが終わっても、ハルヒの機嫌が好くなることはなかった。 授業・休み時間を問わず、ハルヒに無言でシャープペンで背中を突かれ続けるという荒行を堪えしのぎ、ようやく放課後となる。 やれやれ。 とっとと教室を離脱しようと考えていると、不運は続くもので朝倉と目が合ってしまった。 「バイバイ」 去り際に手を振ってくる。 ブスブスブスッ! いっそう突かれまくるのであった。 § 部室には、古泉と長門がいた。 「あれ、涼宮さんは一緒じゃないんですか」 「撒いてきた」 「はい?」 「いや……」 古泉の正面に腰掛ける。 しばし俺たちはボードゲームに興じる。 「なあ」 「なんです?」 「何か異常はないか」 「異常ですか」 顎に手を当てて考え出す。 「いえ特には。平和なものです」 「そうか」 「おとといの七夕も何事もなく終わりましたし、ずいぶんと気が楽ですよ」 七月七日。 必ずハルヒがとんでもないことをやらかすと肝を冷やしていた日。 しかし、結局何も起こらなかった。 強いてあったことを挙げるなら、自転車がかっぱらわれたことと、ハルヒの思いつきで夜に河畔に繰り出して花火をしたことだろうか。 「ま、ハルヒも成長したということだろう」 「これもあなたのおかげです。……あれ、また僕の負けですか」 古泉、三戦全敗。 驚異的な弱さだった。 「遅いな」 朝比奈さんと他一名。 北高は曲がりなりにも進学校を銘打っている。 受験生である朝比奈さんは、講習が夜にまで及ぶことがあった。 他一名は……あの様子なら帰ったかもしれん。 パタン、と長門が本を閉じる。 「帰るか」 「ええ」 長く座りっぱなしというのは腰にくる。 「あ、そうだ長門。話があるから残ってくれ」 「……」 こくり、と頷いた。 § 古泉を先に帰宅させ、長門と二人きりになる。 「すまんな」 「いい」 「朝倉のことだが」 初っ端から本題に入る。 「呼び出して、少し話したんだ」 「そう」 「間違い探し、なんだそうだ」 「……」 長門は黙っている。 「おまえは当然知ってると思うけど、世界がちょいと違うというか」 歯痒さ。 この世界は歯車が微妙にかみ合っていない。 「……それで」 「うん?」 「どうする気」 値踏みするような口調だ。 「どうするって……んー、そうだな」 朝倉も俺の始めたことだって言ってたしな。 やっぱ、俺がなんとかすべきなのだろう。 「しなくていい」 答えを見透かしたような言葉だった。 「あなたは何もしなくていい」 念を押される。 「えーと」 長門のガラス玉のように無機的な双眸が、俺を射抜く。 「普段どおりでいろと?」 「そう、私がすべて執り行う」 珍しい長門の自己主張。 確かに、そうすることが最善なのだろう。 尊重してやりたい、という私的な気持ちもある。 ……だけど。 だけどなあ。 「いや、俺でやれるところまでやってみるよ」 俺は申し出を断った。 「頼りっぱなしというのも情けないし」 「……」 「本当にマズイ事態になったら、頼るから」 それもそれでかなり情けないが。 「その時はよろしく」 頭を下げた。 「……わかった」 納得、してもらえたのだろうか。 長門の申し出の真意はわからない。 ただ。 あの時の長門は、いつになく必死なように見えた。 3:ナンパ 別の日の放課後。 微笑を貼り付けた谷口が歩み寄って来た。 親指を立てる。 「ナンパしようぜっ」 「しない」 「え」 部室へ。 「ちょ、ちょっと待てよ!」 進路を塞ぐ谷口。 親指を立てる。 「ナンパしようぜっ」 「お前誰だっけ」 「アイアムタニグチィ!」 部室へ。 「ちょ、ちょっと待てよ!」 進路を塞ぐ谷口。 親指を立てる。 「ナンパしようぜっ」 「一足す一は?」 「にー!」 部室へ。 「ちょ、ちょっと待てよ!」 進路を塞ぐ谷口。 親指を立てる。 「ナンパしようぜっ」 「RPGのイベントに出てくるエンドレス選択肢みたいだなお前……」 「ん? 何の話?」 白々しい……。 「どうかしたのかい、キョン」 国木田が興味を示した。 「シャルウィーナンパッ」 飽きがきたのか、メッセージがイングリッシュになった。 「ナンパしたいんだと」 「涼宮さんにバレたら、大変だよ」 「言われんでも、俺はやらない」 「だよねぇ。なのにキョンを誘ったの?」 谷口に問う。 「ああ、実はな」 物憂げな表情になる自称ナンパ王。 「俺さ、気づいちまったんだ」 「気づくな」 「ふぅ……つくづく俺って奴はとことん罪な男だぜ」 「生まれついての痴漢野郎だもんな。この先天性猥褻物陳列罪めが」 「昨日の学校帰りのことだ」 「ここだけの話、谷口くんはイジメられっ子だから正式には保健室の帰りなんだ」 「街で女の子に声かけたんだよ」 「女の子Aは逃げ出した」 「ヘイ、そこのカノジョ、お茶でも飲まない? って」 「女の子Bも逃げ出した」 「そしたらさ」 「女の子Cはイケメン彼氏を呼んでいる」 「お前うるさいな!」 キレた。 「ただの相槌だ。気にするな」 「その相槌が、ことごとく話の腰をバッキバキに折ってるんですけど!?」 口角泡を飛ばす抗議は、いささか不気味だ。 「落ち着けよ、醜い男と書いて谷口」 「普通に谷口と書いて谷口だよ!」 さすがに疲れたらしく、肩で息をしている。 「お前らなあ、俺に不満があるならはっきりと言えよっ」 そんなこと言うもんだから。 「じゃあお言葉に甘えて言わせて貰おう」 「うん、そうだね」 「へ?」 俺はコホンと咳をする。 「ナンパ王? 何がナンパ王だ。難破するばかりじゃねえかこの難破王。無計画にイカダ船に手ぶらで乗り込んで着水式気取ってんじゃねえよ」 「航海するたび後悔してるよね」 「何度失敗重ねれば学習するんだお前は。シャケか。とりあえず帰れればいいやあ、って思ってんのか。いい加減、海図か羅針盤持つこと覚えろやサーモン」 「辞書もね」 「役に立たないだろ、そんな不可能しかない落丁辞書」 「アハハハ」 すでに俺たちの隣に、谷口の姿はない。 「チキショーー!」 奇声を上げて、十メートルほど前方を全力疾走していた。 と思ったら倒れた。曲がり角から出てきた人と交錯したようで、もつれ合っている。 担任の岡部だった。 逃げ出す谷口。 追跡の岡部。 すぐさま御用となる。 世界は平和になった。 § 今日は全員勢ぞろい。 「……」 入室早々、約一名に物凄い形相で睨まれる。 ほとぼりはまだ冷めないようだ。 「はい、どうぞ」 「ああ、すいません」 朝比奈さんから湯気の昇る湯飲みを受け取ろうと手を伸ばす。 ……が、朝比奈さんの背後から腕が伸びてきて、それをかっぱらっていった。 誰かというと、もちろんハルヒなわけで。 ごっきゅごっきゅ。 なんと一気に嚥下していく。 熱くないのだろうか。 「ごちそうさま」 飲み終えると、指定席に帰っていく。 空っぽになった湯飲みだけが残される。 朝比奈さんは引きつった笑みを浮かべている。 俺の心は冷えるばかりだ。 「蒸発しちゃったよ」 古泉は俺に哀れみの目を向けた。 4:ナンパ2 放課後になると、また谷口が歩み寄ってきた。 「ナンパしようぜ」 「お前の学習能力にはつくづく驚かされるな」 「ははっ、そう褒めるなって」 「その返しは発想になかった」 「ほら、行くぞ」 腕を引っ張られる。 「学校の中でするのか……」 「ナンパ初心者のキョンにいきなり街頭デビューはハードルが高いからな」 「だから俺はしない」 「まあまあ、そう言わず一発キメてみろよ。すぐによくなるぜ」 「おまえ後輩にシャブ売りつける上級生みたいだな」 こつこつと近づいてくる足音が聞こえた。 「おっと、誰か来るみたいだ」 物陰に隠れる谷口。 「まずは手始めに、そこの角を曲がってくる女子生徒に声をかけろ。指示は俺が出す」 言って、谷口はおもむろにノートを取り出す。 どうやらそれに文字を書いて台詞を伝えるらしい。 大丈夫なんだろうか……。 ともあれ俺は角を曲がってきた人物に近寄っていく。 「ちょっといいかな」 呼び止める。 「はい?」 始めて見る顔の女子だった。 俺は谷口を見る。 『愛してる』 「…………」 空気が凍った。 「あの?」 「いや、なんでも……人違いでした」 俺は首を傾げる女子の横をすり抜け、谷口の方へとダッシュする。 勢いそのままに蹴りつける。 「もうしないか!」 「しません! しません!」 そんなこんなでテイク2。 「来たぞ」 谷口から合図が送られる。 俺は指定の位置につく。 コツコツコツ……。 足音が迫ってくる。 「あー、もし。そこのあなた」 曲がる人影に声をかける。 「……なによ」 鬱陶しげにシルエットが振り返る。 「うげ……」 「……なにやってんのあんた」 白い目を向けてくる人物。 ……涼宮ハルヒその人だった。 「こんなところで暇つぶし? 部活さぼっていい度胸ね」 試合開始早々に胸倉をつかまれる。 「いや、待て待て。これはだな」 俺は救いを求めて谷口を見やる。 『ナンパしてたんだ』 「ナンパしてたんだ」 思わずそのまま口走った。 「へー……」 フリーズドライされた瞳が俺を睥睨する。 「ち、違うぞ、今のはお茶目なジョークだ。本当はな」 谷口を見る。 『君を待ってたのさ』 「お前を待ってたんだ」 やっとまともそうなのが来た。 「あたしを? 部室で待ってればいいじゃない」 それはもっともなご意見だ。 『大切な話なんだ』 「あー、実は大切な話があってな」 とりあえず指示に従っておく。 「ふーん、なに?」 俺が知りたい。 『今日、親帰ってこないんだ』 「今日な、ウチの親帰ってこないんだよ」 偶然にもこれは本当だった。 そういえば谷口には、昼間に話したような気もする。 「はあ!?」 ガン飛ばされた。 「だからなに!? な、なななななななんだってんのよ!」 胸倉つかまれたまま前後に揺すられる。 俺の家庭事情の一部分を掻い摘んで話しただけで、なんだってコイツはこんなに怒りを露わにしてるんだ。 いかん、酔ってきた。 「あ~……」 正常な思考が保てない。 とりあえず谷口を……。 『俺ん家こいよ』 ………………。 …………。 ……。 § 「…………」 「あの、大丈夫ですか?」 古泉が心配そうに覗き込んでくる。 「うぷっ」 「大丈夫じゃ……なさそうですね」 気が付けば俺は、グロッキーになって机に突っ伏していた。 「あの……」 「なんだ」 「さっきからハンカチを甘噛みした涼宮さんが、あなたに熱のこもった視線を送ってるんですが……何か心当たりありませんか?」 「……そもそもここ一時間の記憶がない」 「それは、災難でしたね」 同情の眼差し。 「相当つらいようですし、家まで肩貸しましょうか?」 「すまん……」 今日は早めに上がらせてもらうことにした。 古泉の肩を借りてよろよろと歩く。 「あの……」 「どうした」 「さっきからリボンを甘噛みした涼宮さんが、あなたに熱のこもった視線を送りながら三メートル後方をぴったりとついて来るんですが……」 「……すまん、俺にも意味がわからん」 「そうですか」 家に着いた。 「悪かったな」 「いえいえ、では僕はこれで」 ぺこりと一礼して古泉は去っていった。 「ふう」 「二人きり……」 「うおっ!」 すぐ背後にハルヒがいた。 「川沿いリバーサイド……」 「おーい」 「これ」 買い物袋を取り出した。 「カレーにするから」 「え、作るの?」 「嬉しいでしょ」 「ああ、まあ」 出前を取る手間と出費が省けるのは嬉しいが。 「肉じゃがが良かった?」 「いや、カレー好きだけど……」 妙に甲斐甲斐しいな。 「おじゃまします」 勝手に上がりこむ。 「あ、ハルにゃんだー」 先に帰宅していたマイシスターがとたとたと駆けてきた。 「…………」 「ハルにゃん?」 「ハルヒ?」 ハルヒの動きがPAUSEボタンを押したときのように微動だにしなくなる。 「誰……」 ぼそっ、と呟く。 「誰よこの女」 「はい?」 耳を疑う。 「やっぱり女を連れ込んでたのね」 「あの、なにがなんだがさっぱりなんだけど」 「しらばっくれないで!」 殴られる。 「OUCH!」 予想の遥か斜め上を行く急展開に、さしもの俺も英国調だ。 「なんでこんな可愛い女の子が、あんたの家に上がりこんでるのよ。説明しなさい!」 「いや、家族だし」 「ていうことはアレ? 一つ屋根の下?」 「そりゃ家族だし」 「いや!」 目を覆った。 はしたない!ということらしい。 そのままトイレに駆け込む。 「ねーハルにゃん、どうしたの?」 「さ、さあ?」 それから二十分ほど待ってみたが、出てくる様子はない。 このまま夜通し立て篭もられてもたまらないので、説得に向かう。 「ハルヒ、入るぞ」 扉を引く。 ハルヒは便器の隣で膝を抱えてうずくまっていた。 「…………」 「ハルヒ?」 おそるおそる声をかける。 「インセスト」 「うん?」 判じかねる。思考を疑問符が埋め尽くした。 「インセスト。つまり近親相姦」 「うん」 一応相槌。 「キョンはインセスト。不潔な不潔なインセスター」 「おいおいおい」 制止すべく手を伸ばす。 ハルヒはひらりと身を翻してこれをかわした。 「攻撃? 攻撃するのね?」 「いや、違うって」 「伏せカードを発動するわ」 「はいっ!?」 「インセスター馬鹿(トラップカード)。世間からずっとドローされ、攻撃され続ける」 なんか補足説明文っぽいの出てきたぞ。 「がぶっ」 「あいたっ」 腕に噛みついてきた。 「帰って、もう帰ってよ……」 「いや、ここ俺ん家だから……」 説得はかれこれ三時間に及んだ。 § カレーを美味しくいただき、満腹となった俺は一足早く自室に戻ってきた。 寝転がると、眠気が去来する。 俺は逆らうことなく、眠りの世界へと旅立つ。 ぐー。 …… ………… ………………ぎしっ。 物音に目が覚める。 「……誰だ?」 視線を発信源に移す。 「……なにやってるんだ、おまえ」 寝巻き姿のハルヒがマクラを抱いて立っていた。 長い沈黙の時間が流れる。 「ぬ……ぬか床」 「???」 意味がわからなかった。 わからなすぎて、逆に何かを悟ってしまいそうだった。 「具合確かめようと思って」 やっと合点がいく。 「あーはいはい、ぬか漬けの」 「うん。キョンの部屋でこっそり漬けさせてもらってたの」 「人ん家でなにしてんだてめぇ」 素でブチ切れる。 安眠を妨害されたことも加え、怒り心頭なのである。 「ぬか……美味しいよ?」 メインぬか単体かよ。 「はあ……」 眠気が勝る。 「用済んだら出てけ」 文字通り目を瞑り、酌量した。 「すぴー……」 俺はすぐさま眠りの世界の舞い戻った。 ……。 …………ドスン。 ……………………。 「うーん」 どうも寝苦しい。 得体の知れない重圧感に、俺は薄目を開ける。 「じー……」 ハルヒが俺の腹に跨り、こちらを凝視していた。 「…………」 悪夢だ。 うわ、やべ、目あわせちまったよ……。 「…………」 するとハルヒは今度は体勢を低くして、コアラのようにしがみついてきた。 「?」 忍んでいるつもりなのだろうか。 「おい」 「…………」 「いや、信じられないくらい呆気なくバレてるから」 頭頂部を小突くと、ハルヒはういーんと上体を起こした。 「あらキョン、偶然ね」 「すげぇ偶然だな……」 どんだけの奇跡を起こせば、ここまでの窮地に陥れるのか。 「そこで何をしている」 「…………」 逡巡。 「……ぬか床の」 「この限局にも程がある状況だと、俺をぬか床としたケースのシミュレーションしか想定できないんだが!?」 あまりに非道で遠まわしな嫌がらせ。 「ち、違うわ。あのね」 あたふたとハルヒ。 「うん?」 「ぬかを」 「ふむふむ」 「……枕の下に」 「!?」 跳ね起きる。 「仕込んだのか?」 もし本当なら、翌朝気づかずにのこのこと登校したが最後……。 じゃんじゃんじゃんじゃじゃじゃーん。 イマジン(想像してごらん)。 谷口にあれキョンお前なんか臭くないかとか言われたのを発端に国木田にもキョン今日は一味違うね主に体臭の方向性がとかなんとかで担任の岡部に誰だあ教室でぬか漬けてる奴はって言われて女子にクスクス笑われて晒し者になってるよ。 ユーーーーー(俺)! さらば青き日々よ。 きっとその日から、糠田キョン子なる忌々しきニックネームが人生の汚点ワーストワンとしての市民権を獲得し、確固たる地位と財力を築き上げるんだ。 過酷すぎる未来予想図に絶望した俺はさめざめと泣き出す。 「ジョークよ……ジョーク。そう、スパニッシュあたり出典のやつ」 適当に茶を濁すハルヒであった。 「さあ、明日も早いわ。早く寝ましょ」 極めてナチュラルな動きで俺の布団へと潜りこんでくる。 「ハルヒ」 「おやすみ」 三秒ですこやかな寝息が聞こえてくる。 「ハルヒ!」 「すーすー……」 「…………神よ」 その神は隣で寝ていた。 夜は更けていく。 5:約束 翌朝は極度の寝不足である。 抵抗率百パーセントな体を無理矢理ベッドから引き剥がし、だるさを堪えて登校する。 「しゃきしゃき歩く」 背中を押され坂を登る。 「てか、おまえ外泊するって家に連絡したのか」 「してない」 「冷静に考えたらヤバくないか、それ」 「ヤクいわね」 「いや、ヤクくないし意味ぜんぜん違ぇから」 「大丈夫よ」 しれっと言い切ってみせる。 だらだらと歩いているうちに学校に到着。 教室に入ると、谷口が不自然ににやけていたので、鞄を置くと廊下に舞い戻った。 今日一日は近づかないのが吉だろう。 廊下をあてもなくぶらつく。 すると古泉に遭遇した。 「おはようございます。眠そうですね」 「いろいろあってな」 眠気覚ましに、少し立ち話でもしたい気分だった。 「どうだ、最近は」 「相変わらず暇なものですよ、どうしてですか?」 「昨日か一昨日に、異変はなかったか」 「異変ですか」 「閉鎖空間」 俺の言葉に、場には見えない緊張の糸が張り巡らされた。 「どうなんだ?」 「……いえ、閉鎖空間も例の神人も、発生してません」 「そんなはずはないだろう」 古泉の微笑が歪む。 「根拠が?」 「理屈が合わないんだよ」 「なんのでしょう」 「あの空間は、ハルヒの精神状態が不安定になると発生するんだろ」 「ええ」 「三日前に、俺が女子を屋上に呼び出したところを見られてるんだ」 古泉の糸目がかすかに見開かれる。 「自惚れじゃないよ」 「……そうですね」 賛同を示す頷き。 「人の好意に、鋭くなられました」 成長した我が子を慈しむような声色だ。 俺はもう一歩踏み込んで質問を投げかける。 「なあ……おまえ、俺になにを隠してる?」 「…………」 少しの静謐な時間。 喧騒が遠い。 「約束をしました」 少年は長い時間をかけて、一言を発した。 「侵略する者は」 始業のチャイムが鳴った。 「潰します」 § この日、古泉は部室に顔を見せなかった。 「なんか、バイトが忙しいから少しの間休ませて欲しいって」 ハルヒが伝言を承っていた。 「みくるちゃんも講習みたいだし……あーもう! まったく」 ここ最近の参加率の低さに、ハルヒは頭を抱え深々とため息をついた。 しばらくは今いる三人だけの集まりになりそうだ。 「うーむ」 ゲームも対戦相手がいないと退屈なだけだった。 § 水曜日。 授業中、窓の外に見知った背中を見かけた。 そいつは旧校舎へと歩いていく。 休み時間になると、俺も旧校舎に向かった。 すぐに目的の人物は見つかる。 そいつは文芸部部室の前で突っ立っていた。 「入らないのか?」 古泉は驚いた様子もなく俺を見た。 「あれ、どうしたんです? こんなところで」 「それはこっちの台詞だ。二日もサボりやがって」 「ついさっきまで忙しかったんですが、唐突に暇になりまして」 「そっか」 「はい」 古泉はもう一度、部室をしげしげと眺め始める。 「提案なんですが」 「なんだ」 「遊んでくれませんか」 § 部室には誰もいなかった。 長門も、さすがに学校にいる間中ここにいるというわけではないようだ。 「オセロでいいか」 「ええ、どれでもけっこうです」 パチパチと石を打ち始める。 白と黒。 二色の世界を外へ外へと広げていく陣取りゲーム。 戦争において、肝心なのは手駒の量ではなく管理者の質である。 兵器の差が戦力の決定的な差ではない、と某少佐もおっしゃっている。 土地、天候、兵力の振り分け。 最適な演算処理が求められる。 優れた統率者が指揮を執る軍が勝利を手中に収めるのだ。 「ふむ……」 古泉が唸る。 力の差は歴然で、俺の圧倒的優勢となる。 どう見ても逆転の余地は無い。 「お聞きしたいのですが」 「なんだ?」 「この大差、誰もが僕の負けだと確信する局面で……もしも、ですよ。この差をも埋めてしまう逆転の一手があるとしたら、あなたならどうします?」 「あん?」 古泉の意図がわからない。 「おまえ、そんなの……」 俺はその後の言葉を発する前に、口を閉じた。 無理。 現実逃避だ。 ありえない。 そんな手は存在しない。 きっとそういう風に答えていただろう。 堂々巡りするかつての俺を、俺は斜め上から眺めていた。 いつかの自分より、少しだけレベルアップした自分で。 「俺なら……」 馬鹿なことと知りながらも、真剣に立ち向かう。 それは凄いことだと思った。 「その手に見合った、最高の石で打ってやるんじゃないかな」 だから俺はそう答えていた。 古泉はその答えに満足したように立ち上がる。 「すみません、もう時間です。続きはまたいつか」 足早に部室をあとにする後姿は、妙に清々しく見えた。 § それから三日後の七月十八日。 古泉の訃報が届いた。
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涼宮ハルヒの遡及ⅩⅠ 終った……のか……? 俺は茫然と呟いていた。なぜならとても凌ぎきれそうにないと想像せざる得なかったあの怪鳥の集団が完全に消滅したのだから。 それも長門とアクリルさんが二人で放った、たった二発の融合魔法――フュージョンマジックによって。 「終わり? 何言ってんの?」 が、俺をあっという間に現実に引き戻したのは、肩越しに振り返ったアクリルさんの不敵な笑みである。 ……その頬には嫌な汗を一滴浮かばせていたからな。 ついでに言うなら隣に肩を並べて佇んでいる長門は振り返ることすらしていない。 そうだな。おそらくそれはその視線の先に在る者のためだろう。 ああそうだ。さっきと同じくらいの大群がまた、俺たちに迫って来てやがるんだよ。悪いか。 「嘘よ……」 ん? 「こんなの嘘よ……」 心細く呟いているのは俺の腕の中にいるハルヒじゃないか。それも前髪で瞳を隠して全身が震えてやがる。 どうしたんだ? 「だって……この世界は、あたしの想像が現実化している世界なんでしょ……?」 まあな。俺と古泉がそれを教えたもんな。 「だったら!」 ハルヒがどこか涙を浮かべた瞳で睨みつけてきた。 「何でみんなを危ない目に遭わせなきゃいけないのよ! あたしはみんなで面白おかしく過ごせることを望んでいるわ! なのに何でみんなを苦しませてるの!?」 ハルヒが慟哭の叫びをあげている。 確かにそうだな。お前は無理難題を吹っ掛けることは多いが、それでも俺たちを苦しめてやろう、などと思ったことは一度もなかったよな。 「蒼葉さんの時もそうだった……あたしは、ただ面白い世界であってほしいだけなのに何で……」 その通りだ。お前は誰も不幸にしたいと思っちゃいない。少し方向性はズレているがそれは間違いないだろうぜ。 だからさ、 「誰もあなたと一緒に居て不幸だと思ったことはない」 え? 俺のセリフを取ったのは長門。お前なのか? 「その通りです。僕も涼宮さんに出会って不幸だなんて感じたことはありません」 「あたしもです。あ、でもあんまり恥ずかしい格好させられるのは……」 「みんな……」 「だとよハルヒ。てことは今、この状況でさえもお前のことを恨んでる奴なんかいないってことだ。SOS団にはな」 俺はこの場に似つかわしくないであろうとびっきりの笑顔を浮かべている。 「キョン……」 「だからさ気にするな。必ずこの世界から脱出できるさ」 「で、でも……あの怪鳥の数とか世界の異常気象とかは……」 「何か勘違いしているようだけど、あたしたちに襲ってくるこの世界はハルヒさんの意思じゃないわよ」 割ってきたのは唯一SOS団とは無関係の異世界人さんである。 「だって、もうこの世界は『一つの世界』として定着してしまっている。それは異世界という意味。つまり、ハルヒさんの力はもうこの世界に及んでいない。なぜならハルヒさんも元の世界の一部だから。世界を越えてまでその力が作用されることはないの。 要するに今、この世界はあたしたちを完全に敵とみなしたってことよ。当然よね。だって、あたしたちはこの世界を滅亡させようとしているんだから」 ……なんつう説明だ……いいのか……? 「ついでに言うなら、アサヒナさんの……えっと、ミクルミサイルだっけ? アレが確実にこの世界を滅亡できるってことを意味していることでもあるわ。だからこそあたしたちを、正確にはアサヒナさんを排斥しようと躍起になってるわけだしね」 「え? じゃあ世界を滅亡させよう、なんて考えなければ攻撃されないってこと?」 「……元の世界に戻るにはこの世界を崩壊させるしかない、って言ったはずだけど」 戸惑いながら問うハルヒに、苦笑を浮かべて応えるアクリルさん。 が、次の句は再び襲いかかって来た怪鳥の大群によって阻まれてしまったのである。 再び、大激闘が始まる。長門とアクリルさんと古泉の。 長門とアクリルさんは怪鳥の群れに突っ込み、なんとヒットアンドアウェイ作戦で一羽一羽を各個撃破していくんだ! 確かに作戦としては間違いじゃない。 集団に突っ込んでしまえば向こうの同士討ちも誘発できる。ただし、それは長門とアクリルさんが相手よりも素早く動き回れる、ってことが絶対条件だ。 空を飛ぶ怪鳥相手に、魔法で飛ぶ二人が動きで負けないのだからとんでもない話だ。 んでもって、古泉は古泉で、俺たちを守るこの赤い球を消すわけにはいかず、笑みが消えた必死の形相で現状維持を図っているんだ。 くそ……また見ているだけなのかよ……俺にも何かできることはないのか…… 「キョン見て……」 俺にどこか愕然とした声をかけてきたのはハルヒだ。 「何だ?」 「よく見てよ……さくらさんと有希を……」 ん~~~正直言って、あまりに動きが早いんでなかなか細かく見ることが難儀なんだが…… 目を細めてみる。 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?! 俺もまた驚嘆した。 「嘘だろ……まさか……」 「そうよ……これじゃあの時とまったく同じよ……」 俺とハルヒの震える声が響く。 そう……長門とアクリルさんが肩で息をし始めているんだ……しかも動き回っているわけだからその度に小さな光が点々と反射してやがる…… つまりそれは疲労が蓄積し始めてるってことだ。 無理もない。さっきから怪鳥の大群を相手しているだけじゃなく、大地がもうないわけだからずっと『飛んだ』まま戦い続けているってことになるからな。 それは魔力とやらを放出し続けているって意味だ。 体力と同じで魔力だって器量を越えれば必ず尽きるときがくる。 そしてそれが意味することは―― 「じょ……冗談じゃねえぞ……今、ここにいる古泉も含めてこのままじゃ……」 「分かってるわよ! だから、あたしたちにも何かできないことはないの!?」 ハルヒが叫ぶ。 その気持ちは痛いほど解るさ。俺だってあんなことは二度とごめんだ。 だが俺たちに何ができるというのか。 確かに今の俺は、ゲーム作りした時に創り上げた数多くの中の一つのゲームの時の妙な力は使えるが空を飛べるわけじゃないんで役には立てない。 さっきも言ったが、ハルヒの大技は朝比奈さんが戦列に加わることができない以上、使えない。 いったいどうしろと……って、いや待てよ! 「ハルヒ、お前だ! お前が呼ぶんだよ!」 それは俺の思いつき。しかし、確実に来るだろうと予感できるもの。 「って、何をよ!?」 「前にゲーム作りした時にお前が宇宙戦艦を呼べたじゃないか! アレを呼べ! おそらく、いや絶対に来る! だって、俺にだって妙な力があったんだ! だったら!」 「そっか!」 ハルヒが満面に勝気な笑みを浮かべて、しかし、即座に瞳を伏せてマジ顔に変化! 「来なさい――」 静かに呟き、そして『かっ』という効果音が聞こえてきそうな勢いで瞳を開き、 「ザ・デイオブサジタリアス!」 ハルヒが吠えると同時に空が割れ、その暗闇の空間から、深紅に輝く、とあるトレーディングカードをテーマにした物語に出てきた天空を大いなる翼で羽ばたく神の竜を彷彿とさせるデザインの、一機だけではあったが、戦艦が現れたのである。 「行くわよ! キョン!」 「もちろんだ!」 戦艦に乗り込むべく、ハルヒは俺に手を差し出し、迷わず俺はその手を取った。 「あ、あの?」 古泉が戸惑いの声を漏らして、 「古泉! お前は朝比奈さんを守っていろ! 俺とハルヒが抜ければその赤玉も小さくより強固にできるだろ! なんせ守る人数が減る訳だからな!」 俺は勝気っぱいの笑顔で吠える。 もっとも俺がこう言っている時でもハルヒと俺は深紅の戦艦にトラストされている。 完全に中に入ったとき、俺が最後に見ていたのは古泉と朝比奈さんの戸惑っている表情だった。 が、それでいい。 頼むぜ古泉。 そう心の中で呟き、俺とハルヒはコクピットへと駆ける。ま、入った順番の関係で俺が後ろ、ハルヒが前ではあったがな。 …… …… …… …… …… …… 古泉一樹は感慨深げに上空を眺めていた。 深紅の戦艦がゆったりと動き始めた様を、今、自身は親友という念を抱いている少年を見送るが如く眺めていた。 もし、自分自身が創り出した赤い結界球の中にいなければ、その風圧で古泉一樹の柔らかな髪は揺れていたかもしれない。 「まったく、あなたという人は……」 ひとつ、ため息交じりの呟き。しかし、その表情には自嘲気味ではあったが笑顔が浮かんでいる。 おそらくは彼の親友は見たことがない笑顔。 そこには仮面ではない本当の本物の素直な古泉一樹の笑顔があった。 もっとも、たった一人だけ、その笑顔を見止めた者もいる。 「くすっ、古泉くんってそんな風に笑うこともできるんですね」 「朝比奈さん……」 無邪気な笑顔を向ける朝比奈みくるに、古泉一樹が苦笑を浮かべる。 どことなく照れくさかったから。 「しかしまあ」 が、もう一度、上空へと視線を移し、 「確かに、彼の言うとおり、これで僕は結界球を縮小させ、強化することができます。あなただけを守ることに専念できるということです」 「よろしくお願いしますよ。もう少しですから」 「はい」 などと会話しつつ、しかし、古泉一樹はとある提案を思いつく。 むろん、それは嘘ではないのだが、受け入れてもらえる提案かどうかが判らなかったので、 「ところで僕があなたに近づけば近づくほど、もっとより強固にできるのですが? なぜなら、結界球は範囲が小さければ小さいほどより強固になるものですから」 「どういう意味でしょう?」 もちろん、朝比奈みくるはキョトンと問う。もっともみくるミサイル発射態勢のままではあるが。 「つまり、僕があなたを抱きしめられるくらい近づけば、という意味ですよ。そうすれば、ほとんど一人分の範囲しか必要ありませんし、今、僕が創りだせる一番強固な状態にできることでしょう」 しかし、朝比奈みくるの反応は顔を赤らめるわけでもなく、また慌てふためくわけでもなく、 「ふふっ、ゴメンだけどそれはいいです。だって意識してしまってミサイル充電に支障を来たしそうですから。そうなってしまえば、キョンくん、涼宮さん、長門さん、さくらさん、そして古泉くんに迷惑かけちゃいますから」 それだけを笑顔で言うと、再び瞳を伏せ、精神を集中させる。 ふぅ……やっぱりですか…… そんな彼女を見たあと、古泉一樹は再び視線を上空へと、正確には涼宮ハルヒが呼び、今は自分たちのやや前にある深紅の戦艦を、どこか残念な諦観の笑顔を浮かべて眺めていた。 古泉一樹には解っていた。 朝比奈みくるが一番最初に呟いた名前、正確にはあだ名を聞いて、それを確信させられてしまったから。 彼女にとって誰が一番大切なのかを。 なんとなく辛いことでもあったのだが、古泉一樹はそれをどういう訳かすんなり受け入れている自分に気がつき、どこか吹き出したくなってしまったのである。 …… …… …… …… …… …… 「キョン、あんたが操縦して! あたしは砲撃するからちゃんと当たるように動かすのよ! あと、絶対に有希とさくらさんを巻き込まないようにね!」 「言われんでも分かっている!」 ハルヒが一段高い、コントロールパネルに、ブラインドタッチでいうホームポジションで指を置き、俺はその下で四つに分かれたレバーを軽やかな手つきでさばいていた。 もちろん、二人とも勝気な笑顔を浮かべたままだ。 そりゃそうだろう。 前回と違い、今度は見ているだけじゃない。俺たちだって長門やアクリルさんのために、朝比奈さんや古泉のために戦うことができるんだ。 以前の蒼葉さんのことを思い出せば、どんなに危険なことだろうと、このやる気全開の高揚感がそれを地平線の彼方へと追いやれるってもんさ。 「行くわよ! 連続発射! 撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て!」 おいおい本当に楽しそうな声だな、つか撃つのはお前だ。 などと心の中でツッコミを入れる俺の表情も笑顔が途切れていない。 眼前では、ハルヒの狙撃が怪鳥を確実にヒットする光景が映し出されている。 まあ数は半端なく多い訳で、しかも、この怪鳥もその嘴の奥から怪光線を発射できるんだ。当然、戦艦を衝撃が襲うことだってある、というか襲いまくってきている。 俺の目の前のパネルには、戦艦の破損情報が逐一送られてきており、いくらこの船が強固なものだろうと、相手の数が数である。 当然受け続ければいずれは沈むことだろう。 もっとも、俺とハルヒにとってはそんなことはどうでもよかった。 「こらキョン! ちゃんと操縦しなさい! 一匹外しちゃったじゃない!」 叱咤してくるハルヒの声は妙に明るいしな。 などと、どこか場違いなくらい無邪気な俺たちの耳が軽い金属音を二つ捉えた。幻聴じゃない。確実に聞こえたんだ。 何だ? ――外部回線ONを申請する。互いの声が聞こえるように。可能なはず―― 「んな!?」 「ちょっと! 今の声、有希!?」 ――そう。わたしは今、精神感応魔法、テレパシーであなたたち二人に声を届けている。彼女の使用する魔法をプログラム化しインプットした今の私はこれが可能。しかし彼女はこの戦艦の機能を知らない。だから声をかけるのわたしの役割―― きちんと説明してくれた長門に、ハルヒがやや戸惑いながら外部回線をONに切り替える。 「聞こえる? 有希」 『聞こえる。そちらは』 「こっちも大丈夫よ」 『あなたの方は?』 ん? 俺に聞いているのか? というか、ハルヒが聞こえているなら俺にも当然聞こえていることくらい長門にも解かっているはずだが? 『ええ、あたしの方も大丈夫よ。これで、もっと連携しやすくなるわね』 って、何だアクリルさんに確認していたのか。 俺は思わず苦笑を浮かべてしまったね。 『それにしても助かったわ。空飛ぶ魔法を使いながら攻撃をしてたからちょっと疲れてきてたのよ。でも、この艦隊のおかげで足場ができたわけだし、かなり楽に魔法を使えるようになるわ。あたしも、んで勿論、ナガトさんもね』 外部モニターに映るアクリルさんが俺たちの方を、正確にはコクピットに向けてウインクをしてくれている。 どうやら本当に俺たちは役に立っているようだ。こんな嬉しいことはない。 『そう。そしてこれで大技を使いやすくなる』 長門? などという疑問はアクリルさんが放った魔法によって、驚嘆と供に解明された。 『スターダストエクスプロージョン!』 そう! あの銀河を駆ける数多の流星群を彷彿とさせる魔法が放たれたんだ! 撃ったのは勿論アクリルさんだ! 怪鳥群の一角に確実に大きな風穴を空ける! って、どうして今の今までこの魔法を使わなかったんですか!? 『簡単に言わないでよ。この魔法って三つの魔法を同時に使うようなものなんだから。空を飛んで、防御魔法を使って、コイズミくんの防御結界の威力を高める魔法を使ってたらこの魔法は使えないの。だって、あたしは複数魔法同時使用は五つだから』 『わたしにとってはあなたが五つの魔法を同時使用できることの方が信じられない。どうやっても、わたしは三つまでしか使えなかった』 『それも凄いわね。あたしたちの世界で複数魔法を同時使用できるのは、あたしを含めてたった四人よ。しかも三つ以上となるとあたしと蒼葉の二人だけね。魔法を使い始めてすぐのナガトさんが三つ使えることが驚き。ひょっとして魔法使いの才能あるんじゃない?』 『そう』 ううむ。思いっきり雲の上の会話だな。見ろよ。ハルヒだって目が点になってるぜ。 『それはともかく、じゃあナガトさんも当然いけるわよね?』 『もちろん』 どういう意味だ? 『スターダストエクスプロージョン』 んな! 長門が棒読みに呟くのが聞こえてきたと思ったら、またもや流星が放たれたんだ! もちろん、怪鳥群の一角が完全に吹き飛ぶ! って、凄すぎるから! 『キョンくんとハルヒさんのおかげよ。この戦艦が足場になってくれているおかげで、あたしたちは空飛ぶ魔法を使うことなく、攻撃に専念できるから』 『そう』 二人の満足げな声が聞こえて、 「よぉし! なら、あたしたちも負けてらんないわよ!」 「ああ!」 ハルヒと俺もまた、いつまでも傍観者でいるつもりはなく、長門とアクリルさんを乗せたまま、再び怪鳥の群へと攻撃を再開する。 そうだな、こう表現しても間違いないだろう。 俺たちの快進撃が始まった、と。 涼宮ハルヒの遡及ⅩⅡ
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七章 夕日の光が病室の中にまで及んで、妹ちゃんの心なしか寂しそうな寝顔に差し込んでくる。 この肌寒い時期にもかかわらず、その光は暖かみにあふれていた。 あたしはカーテンを閉めた。間もなく日が沈もうとしている。だけどあいつは来ない。 「キョンくん、どうしたんですかね…」 しらないわよ、みくるちゃん。こっちが聞きたいくらい… 何よ。昨日は来るっていったじゃない。朝からずっと待ってるのに……… 「まだ具合が悪いのかも…」 そうなのかな、昨日最後に会ったときは顔色よかったけど… 「有希、どう思う?」 じっと妹ちゃんを見ていた有希はかすかにこちらに顔を向けた。 「…今のわたしにはわからない。しかし彼に何らかの異常が起こっているのは確か… 行ってあげて。あなたが行くのが最も適切」 異常か。ま、確かにこんな所でずっと待ってるなんてあたしらしくないわね。 引きこもっていじいじしてたら許さないんだから!! それからは早かった。あたしの持ち前の脚力のお陰で目的地にはすぐ到着した。 昨日と同じようにチャイムを押す。………出てこない。 あたしの指に連動して続け様に鳴る音に憤りを感じ始めた頃、あいつは玄関のドアから顔を出した。 「あんた今まで何やってたのよ!!今日は妹ちゃん達の病室に来るんじゃなかったの?!!」 「…スマン、寝てた」 「はぁ!!!?…何よ。まだ体の調子悪いの?」 あたしの問いに答える気はない様子のキョンは思案顔をして、そのあと意を決したように言った。 「まあ、とりあえず…入れよ」 「あのね、あたしはあんたを迎えに来たのよ!」 「頼む、少しでいい、話があるんだ」 表情から、その話の内容を読み取ることは出来ない。しかし キョンの目には確かに決意のような、力強さが宿っっていた。それが何に対する決意かはわからない。 だけどそれは確実にキョンを取り巻いていた。だからあたしは断ることが出来なかった。 どこか儚げで、それでいて並々ならぬ意志を纏ったキョンの後につき、あたしは玄関に上がった。 今日は何故かリビングに通された。ソファに座るように促されたので遠慮なく座ることにする。 「…で、何よ、話って。言っとくけど、つまらないことだったら承知しないわよ」 言うまでもなく、あたしは家族の見舞にも来ないで家で寝てた上に、未だ急ぐ素振りも見せず、 自宅でくつろごうとしているキョンに憤りを感じていた。 「なあ、ハルヒ、俺とお前が出会ってから三年近くになるな」 横にいるあたしに目を合わせず前にあるテレビを見据えながらキョンは穏やかな声で言う。 「だから何よ、思い出話なら病院でたっぷり聞いてあげるから!!」 「ははは、相変わらずだな、お前は。いっつも強引で…だけど…お前も変わったよな。」 はぁ?一体なんなの?さっきから何こいつ語ってんの?ていうかこいつあたしの言ってること聞いてる? 「俺も変われたかな、ハルヒ。」 「知らないわよ!そんなこと!!!!」 あたしのイライラは頂点に達していた。 わけわかんない!何でこいつはこんな時に悠長に話してられるのよ! キョンは、ふうとため息を一つ吐くとこっちに振り向き言った。 「ハルヒ…俺、お前に会えて本当によか…うわあああ!!!!」 突如響いたキョンの悲鳴。それは断末魔の叫びと称しても納得出来る程、苦痛に満ちていた。 見るとキョンはソファから落ちて尻餅の状態だ。 「あ……あ…さ…朝…く…な、何でお前が…ここに…」 キョンの顔から汗が吹き出ている。力強かった目の瞳孔は開きっ放しで、肩は軽い痙攣を起こしていた。 素人目で見てもこれは普通じゃない。 「ち、ちょっと!朝?みくるちゃんのこと?何?どうしたの?」 「くるなああぁ!!!!」 キョンは尻餅の状態のまま、回りにある様々なものをこちらに投げてくる。 新聞紙、座布団、テレビのリモコン。それらが部屋一体を飛び交う。 「また俺を殺しに来たのか!お前なんかに…お前なんかに殺されてたまるかぁぁぁぁ!!!」 なんなの、これ…わけわかんない…キョンはあたしの方に目をむけているが、あたしを見ていない。 「キョン!キョン!やめて!あたしはハルヒよ!どうしたの?!ねえ!!」 「だまれぇぇぇ!!」 ガシャン!!! 「キャアアア!」 嘘…シャレになってない。気がつくとテーブルの上にあった、 ガラス製の灰皿はあたしの後方にある窓の残骸の中で、変わり果てた姿で存在していた。 どうすればいいの、どうすれば…その時ある台詞が頭の中をよぎった。 そして次の瞬間にはあたしはその台詞を吐き出していた。 「ひ、東中出身涼宮ハルヒ!!ただの人間には興味ありません! この中に宇宙人!未来人!異世界人!超能力者がいたら、あたしの所に来なさい! もう一度いいます!あたしの名前は…涼宮ハルヒ!!!以上!!!」 何でこの台詞を言ったのかはわからない。無我夢中だったから… ただ、この台詞はとても大切なもののような気がしたから…あたしにとっても、キョンにとっても。 キョンの動きが止まった。お願い、いつものキョンに戻って… その目にはちゃんとあたしが映ってるだろうか。 「……はあ、はあ、くそ、目障りだ…消えろ、ハルヒにまとわりつくな…消えてくれ。 …………ははは…もう来やがったか…いくら何でも早すぎだろ。」 脈絡があるとはとても思えない言葉を羅列すると、キョンは階段をかけ上がっていった。 ぺたん、と膝をつく。もう何がなんだかわからない。 早すぎるって何が? 思えばここ最近は色々なことがあった。キョンに殴られて、何故かすぐに仲直り出来て、 キョンの家族が事故に会って、でもあいつは来なくて… ああ、ダメ、これ以上考えたらいくらあたしでもパンクしちゃう。 あたしは思考を停止させた。ただボウッと固いフローリングにヘタレこむ。 だけど一旦停止した思考は階段から降りて来たキョンによって 強制起動させられた。キョンの顔色はもう元に戻っている。 「なんなの?ねえ…答えて!いい加減にしてよ!わけが分からない…答えてよぉぉ!」 やば、顔の内側から熱いものが込み上げて来る。 気が付くとキョンはあたしを抱き締めていた。昨日の未遂をいれると、これで三回目。 だけど今の抱擁は今までで一番弱々しい。 「ごめんな、本当にごめん、ハルヒ。やっぱ俺…ダメみたいだ。勝てそうにない…約束守れなくて…ごめんな…」 勝てない?何のことを言ってるの? 「ハルヒ、俺…お前に会えて本当によかった…」 キョンは震えた声で言う。そんなもうお別れみたいな言い方やめてよ。 「だから…今日はお別れを言うためにお前を呼んだ。」 ッッッッッ!!!! 体中に電撃が走った。もう何度目になるかわからない疑問。 「何でよ!説明してって何回も言ってるじゃない!イヤだ!お別れなんて絶対!答えて!答えろ!」 もう自分でも何言ってるかわからない。それが言葉なのか嗚咽なのかすら…そんな叫び。 「教えてよ……ねえ!!……お願いだから…」 「勝手なことを言ってるのは分かってる…だけど言わせてくれ…お…ら…えろ」 「え?」 「俺の前から消えろ!!!!二度と俺の前に姿を表すな!!!!出てけ!!!!」 その能力があたしの内に宿ったことに気付いたとき、最初に思ったのは、 「ああ、あたしもいつの間にか打たれてたんだ」だった。 脳に飛び込んでくるあたしのものとは別の意志。瞬間的に見える灰色の町と蒼白い巨人。 あたしのこれまでの家族環境は、この変化をドラッグの副作用と勘違いさせるのに十分だった。 同じ中学で彼氏でもある谷口くんに、両親のことがバレて別れたばかりで、 消沈していたあたしは、この状況を簡単に受け入れた。 これからはあたしもあの人達と同じ道を歩いて行くんだ… そんな諦めに近い感情があたしを支配した。 それからしばらく、あたしはフラッシュバックの恐怖に耐えながら、 気が狂いそうな自分を必死でつなぎ止め、自室ですごしていた。 この時、自殺を考えなかったのはあとになって考えてみれば、 涼宮ハルヒがそれを許さなかったからなのかもしれない。要するに人材不足の回避。 彼女の無意識の思惑通り、両親が刑務所に連れて行かれるのと同時に、あたしは機関の存在を知った。 そこにいる人達はあたしの素性を知っている。クラスや近所…そして谷口くんが忌み嫌って避けたあたしの素性を。 だけどこの人達はそんなあたしを受け入れてくれた。 警察から両親のいなくなったあたしを、いとも簡単に引き受けて養ってくれた。 やっと自分の居場所が出来たんだと、この能力をくれた神と称される涼宮ハルヒに、あろうことか感謝さえしてしまった。 神様は非情だ。居場所を与えてくれたと思ったら、すぐにそれを奪っていく。 センパイを奪い、本当の古泉くんを奪い、そしてタックンを……… だから復讐する。一番大事な人を、タックンと同じ方法で… なのに、何であなたはあんなに楽しそうなの?ニセモノの自分がそんなに好きなの?古泉くん……… あたしは走っていた。自分が今、泣いているのかどうかも分からない。 ただキョンが言った言葉、それだけがあたしの全てを動かす。 キョンが意味もなくあんなことを言うはずがない。きっと理由があるんだ。それはわかってる。 だけど、そんな理性はキョンに拒絶されたという事実の前では、何の役にも立たなかった。 やがてあたしは、吐き気をも引き起こしそうな疲労と共に足を止めた。足がガクガクする。 このあたしがここまで完全に息が上がっているのだから、相当な距離を走っていたんだろう。 あたしは震える手でケータイを開いた。 「もしもし、古泉ですが。」 「ヴゥ…古泉くん!!キョンが…キョンが!あたし…あたしぃ……!」 涼宮さんのあまりに悲痛な嗚咽混じりの声に、オレは寒気すら感じた。 先程のパーティ会場でのことを思い出す。まさか…いや、そんなはずはない!! 「落ち着いて下さい!涼宮さん!今、自分がどこにいるかわかりますか?」 「わからない、遠い何処か…わからないよぉ…もう、何もわからない…」 だめだ、完全に混乱している。こちらで探し出すしかない。 「朝比奈さんと長門さんにはこちらから連絡します。あなたは決してそこから動かないで下さい。」 それからオレは森さんと新川さんに頼んで、パーティ会場にいる同士に事情を知らせ、協力を促した。 しかし、協力を申し出たのは森さんと新川さんを除けば、田丸兄弟だけ。 他の同士はもう関わりたくないようだ。当然だ。 今救おうとしてるのは自分達を散々振り回し、時には命の危険までをも、もたらした少女である。 むしろ今のオレ達の方がイレギュラーな存在なんだろう。 傍観に徹してくれてるだけでも、ありがたいと言うべきだ。 だけど、止まれないんだ。止まるわけにはいかない。仲間だから…もう二度、仲間を…仲間を失いたくない!!! 「こちら、森と新川。涼宮ハルヒを発見したわ。場所は――――」 あれから長門さんと朝比奈さん、さらにたまたま出会った鶴屋さん、 谷口くん、国木田くんにも協力を願い、捜索を決行した。 思ったより時間はかからなかったが、あたりはすっかり寝静まっている。 涼宮さんはオレ達の町の数十キロ離れた公園で発見された。 足にかなりの負担がかかっているらしく歩くことも、ままならない状態とのことだ。 何が彼女をここまで追いやったんだろう。いや原因は分かってる。 …彼だ。涼宮さんからの電話の内容でそれは推測出来る。なら、次にやるべきことも自ずとと決まってくるだろう。 「了解しました。協力してくれた方々にも連絡お願いします。僕は…確かめたいことがありますので。」 彼の家、本来ならば訪れることに一考を要する時間帯だが、オレに迷いはなかった。 呼び鈴を押してもおそらく出ないだろうと想像はつくが、一応押してみる。 …………やはり出ない。 ならばとオレはピッキング器具を持ち出し、ものの数十秒で玄関のドアをこじあけた。 こんな状態でも機関仕込みの技術を落ち着いて行使する自分に少々驚いていた。 中は闇に包まれていた。何度か訪れた彼の家。 雰囲気が異様に感じるのは、現在の時間帯のせいだけではないだろう。 まずはリビングへと侵入すると、彼はソファに倒れ込むように寝ていた。 よほど熟睡しているのか、口からはヨダレを垂れ流している。 オレは彼を起こす前に、それに気付くことになる。暗闇の中、彼の手の中で月の光に照らされて怪しく光る「奴」の存在に。 これは…注射器?! ドクン! ――神を殺さないか?―― ――何故裏切った!古泉ィ!!―― ――ハハハ、今の俺はとても清々しい気分なんだ―― 頭にこびりついてくるその声を必死にふり払い、彼の右腕を確認する。 彼は右利きだということは、とっくに知っていることなのに、最初に右腕を確認する辺り、 少しは想定していた事態とはいえ、相当に気が動転していたのだろう。 一瞬、「それ」がなくてホッとしてしまった。しかし、すぐにそれを後悔することになってしまう。 「あ…」 彼のもう片方の腕にはおびただしいほどの注射跡が存在していた。 細菌が繁殖しているのか、それは紫色に変色していて痛々しさに拍車をかけていた。 ドクン! 「ん…春日…もう一度…俺に……春日…ハルヒ…」 「あ…ああ…ぅあああああぁぁぁぁ!!!」 オレの絶叫に構うこともなく、彼は寝言をつぶやいているだけだった。 八章へ
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涼/とまーす すてーたす 性格心理 使用武器 ひとこと 本気で電車男のTVが許せない今日この頃。あれ?僕怒って良いんですか?(笑 え~・・・っとあと、なんというか。 「ひまなにか たのむ」 現在、paint_bbsプラグインはご利用いただけません。
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涼宮ハルヒとは谷川流のライトノベル作品『涼宮ハルヒ』シリーズおよび同作のアニメ版である『涼宮ハルヒの憂鬱』のヒロイン(主役にあらず) 北高1年5組(第9巻『分裂』より2年5組)の女子生徒であり、SOS団団長。身長158cm。キョンと同じクラスで、キョンのすぐ後ろの席に座る(何回席替えをしても、ハルヒの能力のためか位置関係は不変である)。入学当初は腰まで伸びるストレートヘアで曜日ごとに髪形を変えていたが、キョンにそのことを指摘されて以降は肩にかかる程度の長さで揃えている。黄色いリボン付きカチューシャがトレードマークで、小学校時代から愛用している。 黒髪黒目の美少女で、プロポーションはキョン曰く「スレンダーだが、出るとこは出ている」。学業の成績は学年上位に位置しており、身体能力も高く入学当初はどの運動部からも熱心に勧誘されていたほど。また料理、楽器演奏、歌唱など多彩な才能を持っており、キョン曰く「性格以外は欠点は無い」。その性格は唯我独尊・傍若無人・猪突猛進かつ極端な負けず嫌いであり、「校内一の変人」としてその名は知れ渡っている。感情の起伏が激しく、情緒不安定になりやすい。また、退屈を嫌っており、何か面白いことをいつも探している。己の目的のためには手段を選ばず、時には恐喝や強奪まがいの行為に及ぶこともある。"地"の性格が露呈する以前の東中時代は多くの男子に告白されて必ずOKしていたが、相手が「普通の人間」であることを理由にことごとく振っていた。自分の都合のいい言葉しか耳に入らず、それ以外の言葉は聞き流す。朝比奈みくるや鶴屋さん、生徒会長など、年上の人物に対しても敬語を使わずタメ口でものを言う(初対面の者との挨拶などは、例外的に丁寧語を使う)。 普段は自分勝手でエキセントリックな性格が目立つが、根底には常識的な感覚も持ち合わせており、宇宙人等の不思議な存在がいて欲しいと思う反面、そんなものはいるはずない(少なくともそう簡単に見つかるはずがない)とも思っている矛盾した思考形態を持っている。物語が進むにつれ人間的に成長したのか横暴さは僅かずつではあるが治まっていく。また、長門が高熱で倒れたり、キョンが事故で3日間意識不明に陥った際には、必死に看病したり体調を気遣ったりするなど、仲間思いの面も強く見せることも。 「恋愛感情は一時の気の迷いで精神病の一種」という持論を持つが、キョンの言動に極度に大きく機嫌が左右されたり、キョンの過去の恋愛をやけに気にしたりしている。 実は「どんな非常識なことでも思ったことを実現させる」という、神にもなぞらえられるほどの力を持っており、そのため様々な組織が彼女に関心を抱いている。だが本人はその力に全く気付いておらず、無自覚の内にそれは具現化され、キョン達は毎度それに翻弄されている。その力のおよぶ範囲、期間等はハルヒの機嫌や望みの強さに影響されるため、法則性がない。なお彼女の能力が際限なく発揮されたりせず、世界がいまだにバランスを保っている点について、古泉は「彼女自身が奇抜な言動に反し常識的な精神をしており、不可思議な物事を心のどこかで否定しているから」と推測している。一方でみくるは、「ハルヒの力は『世界を変える』ものではなく、最初から起こることであった『超自然的存在を無自覚に発見する能力』」としており、組織によって見解は異なる。第1巻『憂鬱』時点からみて、3年前の中学1年の頃に何か(「情報の爆発」「時空の断裂」「超能力者の発生」を引き起こすようなこと)をしたらしいが、詳細は不明。
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涼州関係資料 ★採集場所★ -鉱石採集- 座標 場所 採集物 採集量/1BP 4-15 鉄鉱石・石灰石 5-7 五色砂・琥珀 6-11 煤炭・金剛石の原石 6-12 銀鉱石・琥珀・金鉱石 7-6 煤炭・金鉱石 8-4 煤炭・金剛石の原石 9-11 鉄鉱石・石灰石 10-8 銀鉱石・琥珀・金鉱石 11-4 五色砂・琥珀 14-5 煤炭・金剛石の原石 -木材採集- 座標 場所 採集物 採集量/1BP -薬草採集- 座標 場所 採集物 採集量/1BP -発掘- 座標 場所 採集物 採集量/1BP 3-13 鱗片:黒羽:白玉 30:30:15 4-7 珍獣皮:霊石片 26~33:40~45 5-11 上質獣皮:巨獣牙 39~48:10~16 6-2 上質毛皮:緑玉原 27~31:13~14 7-10 珍獣皮:緑玉原石 27~32:12~16 8-14 鱗片:黒羽:白玉 30:30:15 10-13 上質毛皮:緑玉原石 27~31:13~14 11-2 珍獣皮:霊石片 26~33:40~45 13-5 上質獣皮:巨獣牙 39~48:10~16 ★MOBデータ★ 名前 Lv 場所 経験値 お金 アイテム 涼州ヘビ 42 12-7 荒砂鷲 43~44 12-7・5-10 荒砂サソリ 42 12-7 馬襲い狼 43 8-8 赤砂ヘビ 44 8-8 発光核・滋養獣肉 砂屍狼 42 8-8 大砂クモ 44 6-10 涼州サソリ 42 6-10 流砂サソリ 42 5-10 西風団手下 40 5-8・8-6 赤鉄鉱石・軍用茶・砂竹簡 董卓軍精兵 40~41 5-16 西域の材木・砂竹簡 董卓軍重兵 40~41 5-16 董卓軍弓兵精鋭 40~41 5-16 砂地獄 44 10-7 蜘蛛糸・西域の材木・軍用漢方材・砂竹簡 砂嵐サソリ 43 10-7 発光核
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[すずみ たまお] 登場作品:「Strawberry Panic!」 ○ やらない夫はオカルト掃除人のようです(完) ┗◎ やらない夫はオカルト掃除人を辞めるようです(完) ←鈴園沙衣 スに戻る 涼宮ハルヒ→
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アイドルノイトコリョウ【登録タグ ID IM PRカード バニラ 三瓶由布子】 autolink IM/S07-115 IM/SE04-09 IM/S21-095 カード名:アイドルのいとこ涼 カテゴリ:キャラクター 色:緑 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:3000 ソウル:1 特徴:《音楽》?・《女装》? PR:見てて、律子ねーちゃん! ねーちゃんみたく、 立派なアイドルになってみせる! C RE:うう、すごく不安だけど、いつかイケメンに なるためだっ。がんばろー! うん! レアリティ:PR C RE illust.田宮清高 THE IDOLM@STER DREAM SYMPHONY 02 秋月涼 初回封入特典 何の変哲も無い0/0バニラ。 同作の緑の0/0バニラと比べると、《女装》?が追加されている点が異なる。 ペルソナ4にて、《男装》・《女装》パンプ及び専用回復、THE IDOLM@STER Dearly Starsで涼パンプなどが登場し、サポートカードに恵まれるようになった。 ・関連ページ 「涼」?
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「何よ、折り入って話したい事があるって」 ハルヒは、不機嫌なのか照れているのかよくわからない声で俺に質問した。 決意を胸に、俺はその日の放課後、SOS団の活動が長門の本を閉じる音で終わると同時にハルヒを非常階段の下---つまり、誰も来ない静かな場所に呼び出した。 第三者的な目線から見れば、まさにこの状況は、なんとも青春ドラマ的だと思う。 こんな場所で男女が二人きりになるなどという事はつまり、ドラマの中では、すなわちお約束なシーンで、お約束な言葉を言わなければいけないのだろう。 などという事を、考えていた。 「まぁ、大事な話なんだよ。ハルヒ、お前に一番最初に話しておこうと思ったんだ」 俺はハルヒに向かって言う。 「も・・・、もったいつけずに話しなさいよ!!い、いいわ、特別に聞いてあげる!」 ハルヒは二の腕を組みながら言った。自身に満ち溢れている表情、ああ、いつものハルヒだ。 そのことに一先ず安堵し、次に俺の胸を落ち着けた。 「あのなハルヒ、俺・・・」 ===============【涼宮ハルヒの留学】=============== 昔から「新しい」と名のつくものは、好きだった。新製品、新発売、新幹線も好きだし、新大阪なんていう名前もだ。どうしてなのかは俺にもわからないが。まぁ、例に漏れず「新学期」も好きなイベントの一つではあった。 俺達学生にとって一大イベントである「クラス替え」などという決して他人事ではない大切な行事もさることながら、気持ちも新たに登校する学校というのは、どうしてだろう、空気が違うように感じた。 もちろん、そんな事はおそらく俺の勘違いであり。2.3日もすると、いつもの睡眠が俺を襲ってくる事は間違いないのだが。 その日は、俺にしては(あくまで俺にしては)朝から快適な目覚めだった。妹のドロップキックで目覚めるという事が半ば習慣となっていた俺にとって、自らで自らの目を開いたというのは、大袈裟にいえば一種の悟りの境地なのであった。 「あれれ。キョンくんがもうおきてるー」 残念だな、妹よ。今日からお前のドロップキックで起きる俺では無くなったのだ。 ・・・、正直いつまでこの状態が持つかわからんが。せめて三日坊主よりは長生きしたいものだとは考えていた。なにせ新学期なのだ。学年も変われば気分も変わる、なぜか俺はそんな気がしていた。まぁ、新年を迎えようが、学年が一つ上がろうが、ハルヒは相変わらずだろうがな。 なんと言っても、ハルヒは自分で自分の事を崇高で絶対不可侵などとのたまっているのだ。事情も何も知らない一般人的目線からするとかなりのセンで怪しい事を言っているのだと思う。いや、実際その通りなのだが・・・。 まぁ俺はそんなハルヒが立ち上げたSOS団の団員その1、かつ雑用係であり、まぁ、色んな出来事の鍵らしい。俺にゃまったくそんな自覚はないんだがな。 「キョンくーん、朝ごはんできたよー」 学生服に着替えながら、一階の妹に今行くと返事を返した。 この匂い、今日は目玉焼きに醤油だな。快適な一日は快適な朝ごはんからと、かの有名な・・・ええと誰だったか忘れたが、そんな言葉もあるくらいだしな。 * 登校途中に出会った(出会ってしまった)谷口は、一年生らしい女の子にさっそくお得意の(?)ナンパをしていた。 見るからに可愛い女の子ばかりに声をかけては凄い勢いで平手打ちをくらったり、ぷいと無視されたり、まぁ反応は様々なのだが、連敗記録を今日だけで10は更新していそうだ。 「よぅ、キョンじゃねぇか。新学期になってもかわらねぇな」 「それを言うなら、お前のナンパの成果の無さも相変わらずだな」 「甘いぜ…キョン。お前はまだまだ甘い」 「な、なんだよ」 「変化なんてもんはな!自分で望まなきゃならんのだ!!」 谷口が珍しくマトモな事を言っていると感心していると、いつの間にか俺の横からこつぜんと居なくなり--新しい女の子へ声をかけていた。 あいつのああいう前向きな一面を俺は見習うべきなのだろうか。 そうは思いたくないが・・・。 「やぁ、キョン」 「おう、国木田」 「おはよう、どうしたの?校門で突っ立って」 「いや、谷口のヤツがな」 「あぁ、そういえば昨日たまたま駅前で会ったんだけど、その時から張り切ってたよ。今は年下がねらい目だーって言ってたからね」 「成功率0%の更新は今日も続きそうだがな」 「ははっ、まぁそうだね」 その後靴を履き替え、教室で国木田達と談笑していた。しばらくすると項垂れた谷口が教室へと帰ってきた。本人の口から直接聞いたわけではないが、どうやら成果は上がらなかったらしい。下手な鉄砲数打てど当たらず・・・、谷口の為にあるような言葉だと思った。 その後、チャイムギリギリにハルヒが教室に入ってきたのと同時に担任の岡部もやってきて朝のホームルームが始まった。どこか浮ついた空気が流れる新しいクラス。 新学年といっても、一年生の時とそれほど面子が変わった形跡が見られないのはハルヒの仕業なのだろうか、それとも。まぁ、知っている顔が多いという事はとりたてて悪いと言う事でもあるまい。 「そうだ、キョン」 「なんだ?」 国木田が思い出したように言った。 「昨日佐々木さんにも会ったんだ」 「佐々木に?」 「そうそう、彼女凄いね。なんでも学校の選抜大使かなんかに選ばれたらしいよ」 選抜?大使?なんじゃそら。 国木田の後から現れる影 その影はいきなり大きくなったかと思うと 「ちょっと!キョン!話があるからきなさい!」 ぐ、ネクタイ引っ張るのだけはやめてください。 「生徒会対策よ!」 とか言って、何やら紙とペンを持たされた俺達は前回以上にひいひいいいながら機関紙を発行したり。 野球大会ならぬボーリング大会(これなら少人数でも大丈夫だろ)に参戦したり。 相変わらずハルヒのエンジンは新学期早々から一分の迷いも無く全開だった。 度重なるイベントに、たまにはブレーキをかけた方がいいんじゃないかと、俺が愚痴を零すと 横でニヤケ顔の古泉が 「涼宮さんらしくていいじゃないですか」 とか言うのだ。まぁ、確かに。その方がハルヒらしいよな。あいつはそれでいいんだよ、俺は振り回されているくらいで丁度いいのかもしれない。 長門は長門でずーっと読書に没頭してるし、部室専用のエンジェル朝比奈さんは--ああ今日もトテモ素晴らしいです。 最近じゃメイド服以外にもナース服とかチャイナドレスとか、警察の制服とか(どっからそんなもん買ってくるんだ)を見事に着こなしている朝比奈さんには、もはやどんな賞賛を持ってしても値しない気がしてきた。 そんな朝比奈さんを気の毒に思うのだがしかし、これはこれで、この状況を楽しんでいる俺がいるわけで。そういう意味では俺もハルヒの共犯と言わざるを得ないかもしれない。すみません、朝比奈さん。 そんなこんなで、まぁ。 アクセルを踏むどころか、ペダルが壊れて戻らないというか、新学期だろうが何だろうがそんなハルヒはハルヒで健在なわけで。 SOS団の活動もあり、俺達は時間の経つ事すら忘れる様なくらいに忙しい日々を過ごしていた。 いつの間にか、桜が開花したというニュースが流れてから3ヶ月くらいが経っていた。 その間には花粉症がどうのこうのと世間を騒がせているみたいだったが、幸いうちの家族はそれとは無縁な生活を過ごしていた。 しかし、なんでも花粉症というものは人間の食生活や生活習慣と深く関わりがあるらしく、誰にでも発病する可能性があるというニュースを昨日見たばかりだ。 その日の朝食には、お袋がさっそく買ってきたヨーグルトが登場し、俺はこのヨーグルトが家族を守ってくれる救世主になる様に深く願った。たのむぜヨーグルト、なーんてな。 その日の朝も快適だった。 目覚ましのセットしていた時間より1分前に目覚めた。おはようございます、と、背伸びをすると、カレンダーのマル印に目が行った、今日がその日だと思うと、少々の緊張感に襲われた。もっとメランコリーな気分になるかと思いきや、どうやらそうではないらしい。まぁ、ダメで元々だしな。リラックスしていこう。 国木田に協力してもらいながらここまで来たが、どうも俺にとって「テスト」というのは鬼門であり、それは今回も例外ではなく、あまり手応えの良くないテストのデキ次第で合否が決まってしまうわけなのだから、緊張するのも仕方無い事だろう? 1年生から2年生へと無事に進級した俺たちは、いつもながらにお約束の通学路を通り、いつもながらに授業を受け、SOS団では普段と何も変わらぬ非日常を過ごしていた。 何も変わらぬ非日常、などという表現だが。日常ではなく、非日常と書いたのはあながち間違いではない。そりゃそうだろう、なんだってこの猫の額ほどの文芸部室と言う空間には、未来人、宇宙人、超能力者が一同にかいしているのだ。 それに何より、涼宮ハルヒという存在、SOS団をSOS団たらしめている存在だが、ハルヒがいる事により、もっとカオスに。当たり前の事だが、もはやこの空間は日常という言葉には相応しくない空間になっていた。 それはいつかの俺が望んでいたことであり、ここにはむしろ心地よさすら感じられていたのだが。 2年生へと進んだ俺にとって、本日ある転換が訪れようとしていた。 いつかの谷口の言葉に感化された--いや、まさかな。まぁ、確かに。谷口には感謝するべきなのかもしれないけれど。 昼休み、職員室で聞いた岡部の言葉をそのまま復唱しよう。 「よく頑張ったな、キョン。合格だ」 担任まで俺の事をキョンと呼んだのは、この際どうでも良い事としよう。 俺は嬉しさで有頂天だった。有頂天ホテルだ、乱闘だ、乱闘パーティーだ。 いやすまん、少し取り乱した。 これ、手続きは済んでいるからな。と、岡部から渡されたパスポートに写る自分の半開きの目を見て、どうしてこんな写真が採用されたのかと我ながら自分の目を疑っていた。 いやしかし、実感と言うものはすぐには沸かないものである。 甲子園優勝投手、M-1チャンピオン、宝くじに当選した人。まぁ、少々大袈裟な表現かもしれないのだが今の俺の気分に似ているのかもしれない。 甲子園に行ったわけでもないし、漫才ができるわけでもなく、ましてや宝くじなど買ったことはないのだが。 教室に戻り。 今まで協力してくれた国木田に礼を言うと 「頑張ったのはキョンだよ、僕は何もしていないから」 などと、実に歯がゆい返答を返してくれた。 頬がつい緩んでしまう。 ありがとう、国木田。半分はお前のおかげだ、いや。実際半分以上お前のお陰かもしれん。 なんだか、午後の授業が上の空だった。 後の席のハルヒからは 「キョン?なんなのよ、気持ち悪い」といわれてしまったけれど こんな時なんだ、鼻歌の一つでも歌ってもいいだろ。 だから。この事を話さなければなるまい。 まず、何よりハルヒに。 * 「何よ、折り入って話したい事があるって」 ハルヒは、不機嫌なのか照れているのかよくわからない声で俺に質問した。 決意を胸に、俺はその日の放課後、SOS団の活動が長門の本を閉じる音で終わると同時にハルヒを非常階段の下---つまり、誰も来ない静かな場所に呼び出した。 第三者的な目線から見れば、まさにこの状況は、なんとも青春ドラマ的だと思う。 こんな場所で男女が二人きりになるなどという事はつまり、ドラマの中では、すなわちお約束なシーンで、お約束な言葉を言わなければいけないのだろう。 などという事を、考えていた。 「まぁ、大事な話なんだよ。ハルヒ、お前に一番最初に話しておこうと思ったんだ」 俺はハルヒに向かって言う。 「も・・・、もったいつけずに話しなさいよ!!いいわ、特別に聞いてあげる!」 ハルヒは腕を組みながら言った。自身に満ち溢れている表情、ああ、いつものハルヒだ。 そのことに一先ず安堵し、次に俺の胸を落ち着けた。 「あのなハルヒ、俺・・・」 「ちょ、ちょっと待って!」 言いかけた言葉、両手で俺を制するハルヒ、一体なんだと言うのだ、さっきもったいぶらずに話せって言ったじゃないか? 「こ、心の準備が必要じゃない」 そうか? 「そうよ。そ、…それにキョンも落ち着く必要があるんじゃない?」 そうするとハルヒは2回3回大きく深呼吸をして、いいわよと言った。 そうかそうか、そんなに俺の事を心配してくれるか。 「そ、そうよ!団員の事を心配するのは、団長だけの特権なんだからねっ」 相変わらずハルヒはハルヒだ、俺はそんなハルヒの様子に安堵した。 これならば、今の俺の気持ちを打ち明けても大丈夫だろう。 そう、桜も散ってしまい、葉桜へと姿を変えた頃に決意した気持ちを。 16歳から17歳へ移ろうかという時の、思春期というより、青春まっさかりの気持ちを。 どうしてもハルヒに一番に聞いて欲しかった。 聞いて欲しかったんだ。 それは、俺のエゴなのかもしれないけれど。 他の誰でもない 朝比奈さんよりも 長門よりも 古泉は、まぁ入れてやってもいい 国木田は協力してくれたからな、谷口はこの際論外という事で。 誰よりも、ハルヒに。 俺の気持ちを、知っておいて欲しかった。 「あのなハルヒ。俺、留学するんだ」 * 一陣の風が通り過ぎた。 一瞬目が痒くなった様な錯覚に陥り、花粉症になったのではないかという思考を巡らせたが、そんな考えは一瞬のうちに消えてしまった。 えらく、長い時間が過ぎたと思う。 校舎の大時計は7を指していた。 6月も終わりといえど、この時間になると結構暗くなるものだ。 俺の言葉はハルヒに届いただろうか。 二人の間になんとも言えない空気が流れる ハルヒに、笑われるだろうか それとも、祝福してくれるのか どちらにせよ 俺から伝えるべきことは、伝えた。 「いう事って、りゅ・・・、留学?キョン、あんたが?」 ハルヒはただ、驚いていた。 ああ、そうだろう。それが当然の反応なのかもしれない。当たり前といえば当たり前の反応だ。 俺がハルヒの立場だったら間違いなくそうするだろう。 まさか万年成績最下位の座を谷口と争っている俺がこんな事を言うなんてのは、夢にも思わなかっただろうからな。 酔狂と捉えられてもおかしくはないだろう。 そうだ、でも。 俺は留学するんだ、中国にだ。 「ちゅ、中国ってアンタ、あのチャイニーズな国でしょ?海を越えた向こうにある国じゃない?」 ああ、そうだぞ。 ニーハオ、シェイシェイ。中国語の勉強も少し始めたんだ、向こうに着いてから大変だからな。 「そんな…、そんな事って…」 ハルヒは下を向いて何か呟いている。 俺にはそれが聞こえないが。 ・・・、喜んでは、くれない、・・・か。 やや空いて 「それでな、SOS団の事なんだが…」 一番大切な事を話そうと思った、その時 「お…、めでとう!!」 「へ?あ、あぁ。ありがとう」 ハルヒは今日一番の大きな声で祝福してくれた。 俺は一瞬の事で変な声しか出せなかったのだが 次の瞬間ハルヒはくるりと反転し、全速力で駆けて行ってしまった 俺は、ただその光景を後から見ているだけだった。 俺は追えなかった。 どうしてだろう。 嬉しい反面、寂しいという気持ちになった。 ずっと思っていた事なのに。 言うのが遅くなったのは素直に謝ろう、すまなかった。 新学期が始まって、募集を開始した留学の事。 それに目が留まり、興味を惹かれ、応募した事。 国木田に勉強をみてもらっていた事。 決してダマそうと思っていたワケじゃないんだが、ギリギリまで黙っていてハルヒを少し驚かせたかったという思いもあった。 結果的に、俺の目論見は成功に終わった。 ハルヒは、 泣いていたけれど。 * マナーモードにしていたケータイに着信 ’古泉一樹’と表示され、なんとまぁ、通話する前から大筋の用件がわかるタイミングで電話をかけてきたものだと思った。 『もしもし--マッガーレこと古泉一樹です、いっちゃんってよんd』 四番じゃなくて、呼ばん。なんだよ、今忙しいんだよ 『それはご愁傷様です、実は先程ここ半年で一番巨大な閉鎖空間が発生したのですが。何か心当たりは?』 ・・・ 『あるのですね』 まだ何も言ってねぇだろ 『そうでした、今僕も新川の車で向かっている所なのですが』 それがどうかしたのか 『前にも言いましたが、閉鎖空間は涼宮さんの気持ち一つで発生するものです。あなたにもご理解いただけているかとは存じますが』 あぁ、嫌になるほど 『そうですか、それならば話は簡単です』 ・・・ 『SOS団の活動の後、二人で非常階段に残った涼宮さんと何があったのか、僕は知りませんが』 なんだよ、俺が悪いと言うのか 『責任論を押し付けるつもりはありません、しかし、二人の間に何か誤解が発生しているならばまずそれを正すことが大切なのでは?おっと、現場に着きました、それでは、生きていたらまた会いましょう』 ガチャ……・・・ツー…ツー… 誤解ってなんだよ。 俺は、ハルヒに喜んでもらいたくて。 なのに、あいつ。 何を泣いてるんだよ 電話が来る前から学校を手当たり次第探しているが、ハルヒの姿は見当たらない。 ケータイも出ない、あいつの行きそうな場所を考えたが多すぎて見当もつかない。 ---いや、心当たりはあった。 走り出した。 そりゃもう、生まれてから今まで一番早かったんじゃないかと思うくらいに。 * いつかこんな話をした事があった。 それが一体、いつなのかは記憶が定かではないが。 「ねぇキョン」 「なんだ?」 「あたしね、運命とか信じないの」 「どうしてだ?」 「だって、そんなチンケなものに頼っているなんて、なんだか恥ずかしくない?私の人生は私が切り開くのよ」 「ははっ、ハルヒらしいな」 「あんたはどうなのよ」 「うーん、どうだろうな…」 「キョン?」 「少なくとも、俺はハルヒや長門、朝比奈さん、古泉達と一緒にSOS団に居れて良かったとおもうよ」 「少なくともって何よ」 「まぁ聞けよ」 「仕方ないわね、聞いてあげるわ」 「お前が居てな、横で長門が本を読んでるんだよ。そんで古泉が俺にオセロでボロ負けしてるんだ。それで俺は朝比奈さんのお茶を飲みながら、ああ、今日も良い一日だなって思うわけだ」 「・・・」 「だから、ハルヒには感謝してる」 「なっ・・・!」 「どうした?」 「な・・・、なんでもないわよ・・・」 「そうか?」 「そ、そうよ!」 「うん。だから、これはひょっとしたら運命なんじゃないか、ってな。たまにそう思うんだ」 「・・・ばか」 「へ?」 「あー・・・、もう。バカキョン」 「ひ、人が真剣にだな」 「・・・ちょっと、カッコいいじゃない・・・」 「ん、何か言ったか?」 「な、何も言ってないわよっ!!」 * いつかの公園。 いつかの記憶に、ハルヒの声が重なる。 「やっぱり、ここに居たか」 ぜぇぜぇ、と肩で息をしながら。 ブランコに乗ってる黄色いカチューシャに声をかけた。 声に反応したのか、少し肩が上がる。 俺は息を整えようと、深呼吸をした。 気がつくと、もう日は沈んでいた。 「なによ」 振り向いたハルヒの目は充血していた。 ・・・、泣かせてしまったのだろう、俺が。 色々な思考が巡ったが 一番にすべき事があった。 「すまん、ハルヒ!」 俺は全力で謝った。 かっこ悪いかもしれないけれど、そりゃもう凄い勢いで頭を下げた。 「お前に今まで一言も相談せずに黙っていてすまなかった!お前に喜んで欲しくて、中国語の選考だってなんとか通過して。それで!いざ留学が決まって、俺、うれしくて。でも、お前の気持ちなんか全然考えていなくて!すまなかった!俺、自分勝手だよな!お前の事ちゃんと考えられなかった!ほんと、ごめん!」 口を開いたら、今まで溜め込んでいた気持ちとか想いが溢れてきた。 なんて俺はバカな事をしちまったのだろうかと、今更ながらに思う。 なんで一言くらいハルヒに相談をもちかけなかったのか なんで、どうして。 ハルヒを探している途中に、何度も自問自答した。 本当は、見返してやりたかったのかもしれない。 俺だってやればできるんだぞという所を見せたかったのかもしれない。 男って、そういう生き物だろ? 特に、す・・・、す・・・好き・・・な、女の子の前ではさ。 「なによ・・・、バカキョン・・・」 ハルヒも我慢していたものが溢れたのだろうか その大きな瞳に涙をたくさん貯めていた 「バカ・・・、キョン・・・。あんた、よかったじゃない・・・私、嬉しかった。でも、キョンが私の前から居なくなるって考えたら恐くなって・・・、それで逃げたの・・・、ごめんね、怒った・・・?あたし、キョンが居なくなったらまた中学の時みたいに一人ぼっちになっちゃうかと思って…恐くなった。恐くなったの」 肩が震える。 「お前は一人なんかじゃない!!」 叫んだ。 「お前には、長門だって朝比奈さんだって、古泉だって、鶴屋さんだって、国木田だって谷口だっているじゃないか!」 「キョンじゃなきゃだめなの!キョンじゃなきゃ・・・だめなの・・・」 「・・・っ!!」 あぁ、やっぱり俺は大ばか者らしい。 何が格好をつけたかっただ、ハルヒの一番そばに居た癖にハルヒの事を一番わかっていなかったのは俺じゃないか。 「ハルヒ、・・・すまん」 「キョン・・・キョン」 現実に女の子を、抱きしめた事なんてなかった。夢の中の出来事なんてのはノーカウントだからな。 だから、どうしていいのかわからなかったけれど、ただ、なんとなく知ってはいたんだ。 いつかドラマで見たみたいに、ハルヒの背中にそっと手を添えた。 胸の中で、ハルヒの温もりを実感した。 普段は存在感の塊みたいな感じなのに、こうしてみると意外と小さいんだな 「バカ・・・、あんたが大きいからよ」 涙まじりの声で、上手く聞き取れない。 すまん。 「ねぇ、キョン」 なんだ 「あたしね」 ああ 「キョンの事」 うん 「好き」 そりゃ奇遇だな 「俺もハルヒの事が好きだ。世界で一番、な」 「・・・バカ・・・、大好き・・・」 * 「わざわざ見送りなんて来なくてもいいのに」 俺はお袋と妹以外の4人に向かって言った。 「そういうわけにはいかないでしょ?あんたにはSOS団中国特使としての重責があるんだからねっ!!」 ハルヒ。 元気でな 「あ、あんたもね」 「あ・・・あのぅ・・・キョンくん!がんばってくださいねっ!!」 両腕でガッツポーズを取った朝比奈さん はい、帰ってきた時は朝比奈さんのお茶、楽しみにしてます。 あ、でも、もう卒業・・・ 「うふっ、大丈夫ですよ♪」 あれれ? 目の前がピンク色に・・・ 「ちょっと、キョン?」 はっ、いかんいかん。 「僕も微力ながらサポートさせていただきますよ、中国には親しい友人が居ましてね、その人物・・・」 謹んでお断りする 「それは残念です」 「・・・」 長門、行ってくるよ 「そう」 もしかして最初から知っていたのか? 「・・・教えない」 そうか、俺の居ない間、ハルヒをよろしく頼む。この通りだ 「了解した」 それじゃ、行ってくるよ。 「キョンくーん、お土産まってるよー」 お兄ちゃんって呼びなさい! お袋、行ってきます。 「立派になって帰ってくるんだよ」 ああ、病気なんかするなよ。 飛行機がハイジャックされないかと最後まで心配してくれたハルヒ。 飛行機が墜落しないかと最後まで心配してくれたハルヒ。 愛しい人。 愛すべき人。 ちょっと待っててくれよな、一年なんて、あっという間に過ぎるさ。 * 下宿先で、ハルヒそっくりの人物と一年間を過ごしたのは、また別の話になる。
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名前 涼城 武 コードネーム “影針” シンドローム エンジェルハィロウ/ノイマン/キュマイラ ワークス/カヴァー UGNエージェント/朝倉の客人 身長/体重 181cm/75kg 性別/年齢 ♂/28 設定 朝倉 順二が個人のツテをたどって招いた遠方の支部で働いていたエージェント。涼城という家がそもそも裏のよろず荒事屋のような素性の血統であり、20年前に発生したレネゲイドに武力として目を付けた涼城と、伝え鍛えられた素地としての戦闘技能の高さに目を付けたUGNアクシズの利害が一致した形で長年UGNと提携して活動してきた。その中でも彼は安定した能力と高い戦闘能力を持つ第一の使い手であり、彼自身が単なるエージェントではなくアクシズからの命令を直接受けて動くオフィサーエージェントである。 彼が那珂沢にやってきたのはかつて能力を暴走させて“脱落者”の烙印を押されて処分されかけた涼城 智を改めて処分するという大目的があったため。朝倉 順二とはコネがある相手として滞在場所の確保と“口実”のつじつま合わせ(あくまで朝倉 順二の要請で来たという形を取りたかった)、情報提供の代わりになにかあった時の戦力を提供するという約束だった模様。 現在、UGN那珂沢支部に身柄を確保されている。かなりの手傷を負ったため少しの間は動けないかも知れないが、果たして…… コメント一覧 名前 コメント すべてのコメントを見る